雇い止めに係る労使トラブル対処法

雇い止めに係る労使トラブル対処法

有期の労働契約に係る雇い止めの原則

会社が労働者と労働契約の期間に定めを設けて労働契約を締結している場合(いわゆる「契約社員」として労働者を採用している場合)、その契約期間の満了をもって労働契約は当然に終了します。これが原則です。この場合において会社と労働者との通算の労働契約期間が1年を超えている場合や、契約の更新回数が3回以上になる場合は、事前に明確に契約を更新しないことを労働者に明示していない限り、労働者に対して30日以上前までに契約を更新しないことを予告しておく必要があります。

有期の労働契約に係る雇い止めの例外

有期の労働契約は契約期間満了をもって当然に終了します。ただし、雇い止めが以下の要件を満たしている場合は、その雇い止めが無効と判断されることがあります。

  1. 労働者が契約期間満了後も引き続き業務に従事し、使用者がこれに別段異議を唱えなかった場合(民法第629条1項)
  2. 契約の更新を繰り返し、通算の契約期間が長期に及ぶ場合(労働契約法第19条1項)
  3. 次回の契約更新について、労働者に合理的期待がある場合(労働契約法第19条2項)

 

上記1の場合、従前の労働契約と同じ内容で契約が更新したことになります。

 

上記2の場合、契約の更新が半ば形骸化しており、実質的に期限の定めのない労働契約と同様の状態となっていると考えられます。こういった状態にある労働者との労働契約を労働契約の期間満了をもって雇い止めするときは、期間の定めのない労働者(いわゆる「正社員」)を解雇する場合と同様に、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇い止めは無効と判断されます。

 

上記3については、以下のような事実がある場合、労働者に、次期契約の更新について当然に更新されるとの期待が生じることになるので、そのような状態での契約期間満了を理由とする雇い止めは、上記2の場合と同様に、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、雇い止めは無効と判断されます。

  • 業務内容が実質的に正社員と異ならないもので、当該契約社員以外には、その業務に従事する者がおらず、契約期間満了によってその業務を終了させることができない場合。
  • その会社にとって、契約社員の行う業務内容が必要不可欠なものである場合。
  • 使用者の「次回の契約更新も宜しく」とか「有期契約は形式的なもの」などといった次回の契約更新に期待を持たせるような言動がある場合。
  • 契約期間は設けられているものの、自己都合退職の場合を除いては、例外なく契約の更新が行われている場合。
  • 契約更新時にさしたる手続きが行われておらず契約更新が形骸化しているような場合。

労働者が雇い止めの無効を主張してきた場合

まず、労働者がどういった理由に基づいて雇い止めの無効を主張してきているかを確認しなければなりません。

 

労働者が上述の雇い止めの例外の2番目の通算の労働契約期間が長期に及ぶことを理由として雇い止めの無効を主張してきている場合は、会社に、その労働者を雇い止めするに足る十分な理由(解雇に係る労使トラブルを参照)がなければ、会社が不利な状態にあると言えます。このようなときは、次期契約の更新については行わない旨をよく説明したうえで、従前と同様の条件で職場復帰させるか、相応の解決金を支払うことを条件に労働契約については契約期間満了を理由に終了したことを相互に確認することを内容として和解を結ぶ形での解決を図るべきです。
以前、私が労働者から受けた相談で、会社が労働者との契約の更新を何十回と繰り返し、通算の労働契約期間も20数年に及ぶ状況での雇い止めはおかしいのではないか、という内容のものがありました。私は当然「おかしい」と答えました。このような通算の労働契約期間が超長期間に及ぶような場合は、仮に裁判所で雇い止めの効力を判断した場合に、労働者の主張如何によっては、裁判所は正社員に対する解雇であり解雇は無効だと判断するのではないかとすら思います。

 

労働者が上述の雇い止めの例外の3番目の、次期契約の更新につき合理的な期待を有していたことを理由に雇い止めの無効を主張してきている場合は、その理由に該当する具体的な事実の有無を確認する必要があります。
例えば、労働者の契約の更新時にしっかりとした更新手続きを行わず、労働者に対して新たな労働契約書等の手交も行っていなかった、あるいは、通常労働者から契約の更新をしない旨の通知がない限り自動的に契約を更新していたというようなときは、労働者に次期契約の行使人に対する強い期待を生じさせることになります。。また、会社が労働者に対して、積極的に次期契約の更新について、労働条件等を説明していたような場合にも、労働者に次期契約の更新に対する強い期待を抱かせます。こういった場合に、労働者が裁判所に労働審判手続きなどを申立てた場合には、会社が不利な状況になることが予想されますので、次期契約の更新については行わない旨をよく説明したうえで、従前と同様の条件で職場復帰させるか、相応の解決金を支払うことを条件に労働契約については契約期間満了を理由に終了したことを相互に確認することを内容として和解を結ぶ形での解決を図るべきです。

 

労働者が、次期労働契約の更新につき、合理的な期待を有していたかどうかが争点になる雇い止めに係る事件で、しばしば争いになるのが、社長や上司が労働者に、次期契約の更新に期待を抱かせるような言動があった場合です。例えば社長や上司が労働者に「契約は多分更新する」とか、「次も更新するから大丈夫」あるいは「次もよろしく」といった類いの発言をしているような場合でその労働者を雇い止めした場合に、その労働者が雇い止めの無効を主張してくることがあります。
もっとも労働者が、社長や上司がそういった発言をしたことを理由に雇い止めの無効を主張してきた場合は、労働者側でそういった発言があったことを立証(証拠により証明すること)しなければなりませんから、その立証はなかなか難しいのではないかと思います。また社長や上司の、そういった類いの発言等があったとして、その一事を以て労働者に合理的な期待があったという判断になるかというと、必ずしもそうとはならないかもしれません。
そうはいっても、社長や上司の安易な一言が、後々の労使トラブルの原因となることもあるということを肝に銘じて、軽々な発言は慎むべきです。

 

 

 

契約社員に対する契約期間途中での解雇

会社が、有期労働契約期間の中途で労働者を解雇することは原則できません。
ただし会社が有期契約の労働者を解雇することに止むを得ない事由がある場合には、解雇が認められることもあります(労働契約法第17条1項)。尤も、契約期間中途での解雇の場合の、止むを得ない事由、はかなり限定的に判断されるものになると思われます。そもそも、有期の労働契約は、期間満了とともに当然に労働契約が終了するのですから、会社としては契約期間満了を待てばよいところを、それを待たずして契約を解消しようとするのですから、止むを得ない事由がより厳しく判断されるのは当然のことです。

 

また、契約期間中途での解雇の場合、その事由が会社の過失によって生じたものである場合には、労働者は会社に対して、解雇日の翌日から契約期間満了日までの賃金相当を逸失利益として、損害賠償を請求することもできます(民法第628条)。

 

以上から、会社は有期契約の労働者を解雇することはできないと考えておいて差し支えありません。

契約社員に係る不合理な労働条件の禁止

使用者は、契約社員(有期の労働契約を締結している労働者)について、賃金や労働時間、福利厚生等において、契約社員であることなどを理由として、正社員と比較して、労働条件に不利益となるような差(不合理な労働条件)を設けることはできません。
契約社員と正社員との労働条件の相違が不合理と認められるか否かは、以下の3点を総合的に考慮して個々の労働条件ごとに判断されます。

  1. 職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)
  2. 当該職務の内容及び配置の変更の範囲
  3. その他の事情

 

主な労働条件の相違の内容は次のアからウのとおりです。

ア.通勤手当について、正社員には通勤手当を全額支給するが、契約社員に対しては一部しか支給しないあるいは全く支給しない
イ.社員食堂の利用について、契約社員の利用を制限する、あるいは正社員には補助券を交付するが契約社員には交付しない
ウ.安全管理について、正社員と契約社員との間に差をもうける

この法律に照らして、不合理と認められる労働条件については、その不合理な部分は無効と判断されます。そして、その不合理な労働条件ゆえに、契約社員の権利が侵害されたときは、使用者はこの契約社員に対して、不法行為責任に基づく損害賠償責任を負うことがあります。

無期労働契約への転換(労働契約法第18条:平成25年4月1日施行)

平成25年4月1日以降に有期の労働契約を締結し、契約を更新した結果、通算の労働契約期間が5年を超える場合、労働者は使用者に対して、無期労働契約への転換を申込むことができるようになります。労働者が使用者に対して、無期労働契約への転換の申込みを行った場合、使用者はこれを拒否できず、申込みがあった時点で使用者はこの申込みを承諾したものとみなされます。
無期労働契約への転換を申込むか否かは労働者の自由です。
使用者が労働者との間で有期の労働契約を締結するときに、通算の労働契約期間が5年を超えた場合の無期労働契約への転換を認めない、などといった条件を設けることはできません。
労働契約期間は、前後の労働契約期間の間に6ヶ月以上の無契約期間がある場合は、通算されません。例えば、使用者と労働者が1年間の有期の労働契約を締結し、契約期間満了後直ちに契約更新を繰り返すことが3回連続した後に6ヶ月以上の間を空けて(この契約期間前後の6ヶ月以上の間のことを「無契約期間」といいます)、再度1年間の有期の労働契約を締結したような場合、通算の契約期間は、4年と1年とに分かれることになります。5年とはなりません。

@契約期間1年
A契約期間1年
B契約期間1年
C契約期間1年
無契約期間
6ヶ月以上
D契約期間1年

※上の図のような場合、CとDの契約の間に6ヶ月以上の無契約期間があるので、@からDまでが通算されることにはならず、CとDの契約の間で通算の契約期間が@からCまでの4年とDの1年とに分断されることになります。

 

無期労働契約への転換が認められる対象となる通算の労働契約期間の始期は、平成25年4月1日以降となります。平成25年4月1日前の有期の労働契約期間については無期労働契約への転換が認められる契約期間の通算の対象にはなりません。したがって、この法律に基づく労働者の権利として、無期の労働契約への転換の申込みが認められるのは、早くても平成30年4月1日以降ということになります。


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