解雇に係る労使トラブルについて

解雇に係る労使トラブル

解雇について事業主として認識しておくべきこと

まず会社事業主として認識しておくべきことは、日本の現行の労働契約法上、解雇はかなり限定的にしか認められていないということです。

 

解雇は、@客観的に合理的な理由があり、A社会通念上相当と認められる場合、以上の要件がそろわなければ有効とは判断されません。

 

単に、労働者の勤務態度が悪いとか、営業成績が悪い、職務遂行能力が劣る、職務に耐えられない、経営状況が芳しくない、という事実があるだけでは、理由に該当しないか、仮に解雇理由に該当する場合であっても、社会通念上解雇相当とは認められないと考えて差し支えありません。

 

例えば、労働者の勤務態度や営業成績、職務遂行能力が悪いというような場合、会社として、その労働者に対してある程度、注意・指導・教育を行った、配転可能な配転先がなかった、という事実がそろわなければ、解雇理由があったということにはならないか、社会通念上相当だという評価にはならないでしょう。

 

経営状況が芳しくないことを理由とする解雇は、いわゆる整理解雇ですので、人員削減の必要性がどの程度あるのか、解雇以外の方法で人員を削減できないのか、被解雇労働者の選定がある程度の基準に則っているのか、会社が労働者に十分な説明を行っているか、という点が解雇の効力を判断する要素となります。

 

解雇は、就業規則の絶対的記載事項ですので、会社が労働者を解雇する可能性があるときは、解雇する理由を就業規則に明記しておく必要があります。

 

以上に挙げたのは普通解雇についてです。

 

解雇は普通解雇のほかに懲戒解雇があります。懲戒解雇は、普通解雇とは法的根拠を異にします。つまり、懲戒解雇は労働者に対して制裁を加えることを目的とする解雇であり、会社の懲戒権の行使と考えられています。
したがって、労働者を懲戒解雇するときは、就業規則に懲戒の種類と種類ごとの事由が規定されており、懲戒の種類として懲戒解雇が規定されており懲戒解雇の対象となる事由が限定的に列挙されていることが、大前提となります。また、懲戒処分を行うときの会社内での手続きについても規定してく必要があります。
懲戒解雇は、労働者の受ける不利益の程度が小さくないことから、極めて限定的にしか認められていません。特に社会通念に照らして、その程度のことでは懲戒解雇に値しないだろうという判断をなされることは間々あります。ときどき見受けられる例として、勤務態度不良を理由として懲戒解雇していることがありますが、普通解雇理由としても危ういのに、ましてや懲戒解雇など、と思ってしまいます。
会社の就業規則に懲戒解雇規定がない会社が、労働者に対して懲戒解雇通知書を送付していた事例がありましたが、専門家からするとお笑いのレベルです。

 

労働者から「不当解雇」を理由として何らかの請求を受けたとき

まず確認しなければならないことは、会社が本当に労働者を解雇したのかどうかという点です。

 

労働者の上司や社長がその労働者に「もう会社を辞めろ」と言ったことを受けて、労働者が会社に出勤しなくなった後に、その労働者が会社に対して、解雇予告手当の支払いを求めてきたり解雇無効を主張してくることがしばしばあります。

 

このような場合には、会社として真に労働者を解雇する目的で労働者に「辞めろ」と言ったのかどうか確認する必要があります。
通常は、会社の労働者に対する解雇の意思は、解雇通知書や解雇理由証明書等の文書を以て労働者に通知します。

 

したがって、「会社を辞めろ」といった発言が社長や労働者の上司にあったとしても、それが労働者と口論になった末の売り言葉に買い言葉的なものであれば、会社としての真の解雇の意思を示したとは判断できないこともあります。

 

また、「会社を辞めろ」という言葉が、会社として解雇の意思を示したのではなく、法律上意味のある行為か単なる事実行為かは別として、労働者に退職を迫った言葉ではなかったのか、という点も検討しなければなりません。

 

以上の点を検討した結果、少なくとも会社として労働者に対して「辞めろ」という言葉を以て解雇の意思を通知したのではないという場合は、労働者の解雇予告手当の支払い請求や解雇無効の主張は、その根拠を欠くことになりますので、一義的には応じる必要はないということになります。

 

もっとも、「会社を辞めろ」という言葉によって、労働者がその言葉を解雇と誤信して出勤しなくなったという場合は、労働者の会社に対する、慰謝料を含む損害賠償請求の根拠とはなり得ます。

 

したがって、会社としてある程度の解決金を用意して、労働者との話合いにより、解決金を支払うことを条件に労働契約を終了させることで和解を図るか、出勤しなかった期間の賃金を支払うことを条件に職場への復帰を促す、といった現実的な解決を図ることを検討しておくべきでしょう。

 

間違いなく解雇してしまっている場合

会社が労働者に対して、解雇通知書や解雇理由証明書等で会社の解雇の意思を通知している場合や、雇用保険被保険者離職証明書にて離職理由を「解雇」で処理している等客観的に解雇したことがある程度推認できるような場合は、解雇の事実は争えないでしょう。
このような場合は、解雇の効力が有効か無効かが争われることになります。

 

解雇の効力が有効か無効かについてが争点になるような場合、会社が労働者を解雇する前に解雇を回避するような指導教育等を行いかつその事実に関する証拠を残しているなど対策を十分に講じていない限り、正直なところ、会社は圧倒的に不利です。
特に、社長さんが、感情的になって労働者を解雇してしまっているようなときは、勝ち目はありません。

 

労働者を間違いなく解雇していて、かつ訴訟に至った場合にその解雇が不当解雇と判断される可能性が高い場合は、早急に解決を図る必要があります。解決を長引かせればそれだけ、余計な費用が掛かってしまいます。

 

会社が労働者と解雇について和解により解決を図る場合の、和解の内容は、大きく二つが考えられます。
一つは、会社が労働者に対して、解決金名目の和解金を支払うことを条件に、労働契約については会社と労働者双方の合意により終了する。
もう一つは、解雇した労働者に対して、解雇期間中の賃金を支払ったうえで、解雇を撤回して職場復帰させる。

 

中小企業の場合、一度解雇した労働者を職場復帰させることは難しい場合が多いでしょう。こういった場合は、会社が労働者に対して、賃金の数ヶ月分から1年分程度相当の解決金を支払うことを条件に、労働契約については会社と労働者の合意により終了することを内容として和解することにより解決を図ります。
この場合の解決金の妥当な額については、解雇した労働者の勤務年数、解雇の理由、会社の経営状況等を総合的に見て決定します。

 

通常は、解雇期間中の賃金相当+αが解決金額となります。ただし解雇した以降解決に至るまでの間が長いとき(特に会社が労働者を解雇した以降しばらくたってから労働者が会社に解雇無効を主張してきたような時)は、労働者に特に解雇無効を主張すべき切迫した事情がなかったとも考えられますので、解決金については解雇期間中の賃金相当以下になるでしょう。

 

以上から、会社が労働者に解決金を支払うことを条件に、労働契約については終了することを内容とする和解を希望するときは、少しでも早く、労働者と話し合いをするなどにより解決を図ることがベストだと言えます。

 

また、労働者が裁判所に地位確認等(解雇無効)を申立ての趣旨とする労働審判手続きを申立ててきたときは、申立ての趣旨に対する答弁については、申立棄却の労働審判を求めつつも、会社の主張として「解決金を支払う用意がある」とするなどして、現実的な解決を希望する旨を裁判所と申立人である労働者に伝えておくと比較的スムーズに、調停により解決を図ることが可能です。

 

もう一つの解決内容である、会社が労働者に対する解雇を撤回して職場復帰させる、という内容で解決を図る場合は、解雇した労働者が職場復帰した場合のその職場での影響等を検討しなければなりません。もっとも労働者の立場からすると、一度解雇された会社に対しては、会社に対する信頼感などが喪失していることも多く、仮に会社が職場復帰を認めても労働者がそれを拒否することもあります。このようなときは、やはり会社が労働者に対して解決金を支払うことを条件に労働契約については終了するという内容での解決を図ることになります。
ただし、会社としては、労働者に対する解雇を撤回して職場復帰を認めるとしているのにもかかわらず、労働者がそれを拒否するということであれば、労働契約の終了については労働者の事情による部分も含まれることになります。そうであるならば、会社が当初より解決金を支払うことを条件に労働契約については終了するとの内容での和解を希望する場合とは異なり、妥当な解決金額は解雇撤回後についてまでも考慮する必要はないと言えます。

 

なお、労働者が解雇無効ではなく、解雇予告手当の支払いを会社に求めてきた場合で、労働基準法に照らして、会社が労働者に解雇予告手当を支払うべき義務を負っている場合は、速やかに労働者に解雇予告手当を支払っておくべきです。このとき会社と労働者との間で、解雇予告手当の支払いに関する合意書を作成しておきます。合意書には、解雇予告手当の支払いのほかに、会社と労働者との間には何ら債権債務がないことを確認する旨の清算条項を盛り込んでおくことが肝要です。こうしておくと、解雇予告手当支払い後に、労働者がさらに会社に対して不当解雇(解雇無効)を主張してきたときに、その主張が失当であるとの反論ができる根拠となります。

 

 

 

 


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