パワハラ・セクハラ・モラハラに係る労使トラブル対処法

パワハラ・セクハラ・モラハラに係る労使トラブル対処法

パワハラ・セクハラ・モラハラ・・・3つのハラスメント

近年、パワハラ・セクハラ・モラハラ(当事務所ではこれらを総称して「3ハラ(=サンハラ)」と呼んでいます。)を原因とする、労働者から会社に対する慰謝料等の損害賠償請求事件が増加しています。

 

会社としては、これら3ハラが発生しないように社員教育を行うなどして職場環境を整え、かつ就業規則等でハラスメントの加害労働者は懲戒処分の対象となることを規定する等労働条件を整備しておく必要があるでしょう。

 

また、労働者から3ハラに係る相談や報告を受けた会社の担当者は、しっかりと事実関係を調査し、3ハラの事実が確認できたときは、加害者に対しては再発防止のための社員教育を行うとともに、必要に応じて配置転換を行うなどの策を講じなければなりません。
3ハラの被害者からの相談等を会社が放置した結果、被害者が精神障害を発症し業務に耐えられなくなったような場合は、その労働者から会社が、会社自体の安全配慮義務違反等の債務不履行や会社自体の不法行為を原因として損害賠償請求を受けることがあります。
職場におけるハラスメントを原因として精神障害を発症した場合で労災保険法上の要件を満たせば、労働者が労災認定されます。

パワハラ(=パワーハラスメント)とは

厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ」は、パワハラを次のように定義しています。
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。
※注意点
1.パワーハラスメントは、上司から部下へのいじめ・嫌がらせといった、職務上の地位に係る優位性のみに留まらず、人間関係や専門知識などの様々な優位性が含まれる。従って、先輩・後輩間、同僚間、部下から上司への行為、そういった場合も有り得る。
2.個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じることがあるが、これらが業務上適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当らない。

 

パワハラに該当する具体的な例としては次の6つの行為類型に分類できます。

類型
具体的行為
1
身体的な攻撃暴行・傷害
2
精神的な攻撃脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3
人間関係からの切り離し隔離・仲間外し・無視
4
過大な要求業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強
要、仕事の妨害
5
過小な要求業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の
低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6
個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること
※上に挙げたものは、職場のパワーハラスメントに当りうる行為のすべてを網羅するものではなく、これ以外の行為は問題ないということではないことに留意する必要がある。

セクハラ(=セクシャルハラスメント)とは

厚生労働省はセクハラを次のように定義しています。
職場において、労働者の意に反する性的な言動が行われ、それを拒否するなどの対応により解雇、降格、減給などの不利益を受けること」又は「性的な言動が行われることで職場の環境が不快なものとなったため、労働者の能力の発揮に悪影響が生じること
上記の定義のうち前者を「対価型セクハラ」、後者を「環境型セクハラ」と言います。

 

セクハラか否かを判断する基準として、人事院は次のような通知を行っています(人事院規則10−10の運用について(通知))。
一.性に関する言動に対する受け止め方には個人間や男女間で差があり、セクシャル・ハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要であること。具体的には、次の点について注意する必要がある。
 (1) 親しさを表すつもりの言動であったとしても、本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしまう場合があること。
 (2) 不快に感じるか否かには個人差があること。
 (3) この程度のことは相手も許容するだろうという勝手な憶測をしないこと。
 (4) 相手と良好な人間関係ができていると勝手な思い込みをしないこと。
二.相手が拒否し、又は嫌がっていることが分かった場合には、同じ言葉を決して繰り返さないこと。
三.セクシャル・ハラスメントであるか否かについて、相手からいつも意思表示があるとは限らないこと。セクシャル・ハラスメントを受けた者が、職場の人間関係等を考え、拒否することができないなど、相手からいつも明確な意思表示があるとは限らないことを充分に認識する必要があること。

 

男女雇用機会均等法第11条では「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置」が規定されていますが、この条文中の「性的な言動」および「就業環境が害される」の判断基準について以下のような通達が発せられています(平成18年10月11日 雇児発第1011002号)。
「労働者の意に反する性的な言動」及び「就業環境を害される」の判断に当たっては、労働者の主観を重視しつつも、事業主の防止のための措置義務の対象となることを考えると一定の客観性が必要である。具体的には、セクシュアルハラスメントが、男女の認識の違いにより生じている面があることを考慮すると、被害を受けた労働者が女性である場合には「平均的な女性労働者の感じ方」を基準とし、被害を受けた労働者が男性である場合には「平均的な男性労働者の感じ方」を基準とすることが適当であること。
ただし、労働者が明確に意に反することを示しているにも関わらず、さらに行われる性的言動は職場におけるセクシュアルハラスメントと解され得るものであること。

マタハラ(=マタニティーハラスメント)とは

マタハラについては、日本労働組合総連合会が次のように定義しています。
働く女性が妊娠・出産を理由に解雇・雇い止めをされることや、妊娠・出産にあたって職場で受ける精神的肉体的なハラスメントです。働く女性にとって悩みとなる「セクハラ」「パワハラ」に並ぶ3大ハラスメントの1つです。

 

マタハラで特に問題となることは、女性が妊娠・出産(これらを理由に女性が一時的に軽易な業務への転換を求めたり休業した場合等も含む)したことを理由に、会社がその女性に対して人事上の不利益な取扱い(降格人事や解雇等)を行うことです。
まず、解雇については、男女雇用機会均等法や労働基準法等で女性の妊娠や出産等を理由としてはこれを行うことは禁止されています。したがって、妊娠・出産した女性を絶対に解雇してはいけません。
降格人事については、妊娠や出産した女性が自らの自由な意思に基づいて降格することに了承したとき、または事業主においてその女性労働者につき降格の措置を執ることなく軽易業務への転換をさせることに円滑な業務運営や人員の適正配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合を除いては、原則として認められません。
では、女性が降格されることにつき同意をしていれば降格が可能かというと、単に同意があるという程度では弱いと言わざるを得ません。会社が女性に対して、降格により受けるメリットやデメリット、会社の事情等を十分に説明して、会社が女性の意向を踏まえたうえで、女性が同意したという経緯等がなければ、降格人事は無効と判断される恐れが大きいでしょう。したがって、妊娠・出産した女性が一時的に軽易な業務への転換を希望している場合でも、一定の期間を経過した後は従前の業務への復帰を希望しているような場合は、降格人事を行うことはできません。
また、業務上の必要性から妊娠や出産をした女性を降格しなければ支障がある場合というのは、かなり限定的にしか認められないでしょう。

 

参考裁判例→平成26年10月23日最高裁第一小法廷判決

 

労働者が会社に逸失利益や慰謝料等損害賠償を請求してきたら

ハラスメントの被害を受けた労働者が、精神障害等を発症し従前の業務を行うことができなくなったことや退職したことを理由として、逸失賃金等の財産的損害や、精神的苦痛に対する慰謝料などの賠償を請求してきた場合、会社としてはまず一定期間を設けて、社内で調査を尽くしてハラスメントに係る事実関係を把握する必要があります。このとき、会社は単にハラスメントの有無だけを調査するのではなく、その労働者の直近数箇月の労働時間(残業時間)も確認しておく必要があります。労働者に長時間労働の事実がある場合は、精神障害発症の原因として考慮しなければなりません。

 

社内でハラスメントの事実に関する調査を行うときは、損害賠償を請求してきている労働者から請求の根拠とのなっているハラスメントに係る事実を時系列的に聴き出すか文書での提出を求めて、それに基づいてハラスメントの加害者や、被害者・加害者と一緒に仕事を行っていた労働者等から事情を聴取します。この時点で注意することは、事実だけを抽出してその事実に対する評価(ハラスメントに当たるかどうか)はその時点ではしないということです。

 

事実関係に係る調査を終えた後は、労働者等からの聴き取りなどで把握できた事実がハラスメントと言えるかどうか評価していきます。
注意しなければならないことは、ハイパーセンシティブ・ビクティムに関する点です。これはハラスメントの被害を受けたと主張する労働者が、上司等の発言などに対して過敏に反応したり過大に評価するなどしていることです。業務上必要な指示や注意・指導等は当然行われるべきものですし、その時の上司等の言葉が多少厳しかったとしてもそれが直ちにパワハラということにはなりません。また、例えば男性労働者の卑猥な言葉や男性労働者が女性労働者の肩に手を乗せるといった行為等もこれが一度きりであったような場合には、その女性に慰謝料を請求するほどの精神的苦痛が発生していたという評価にはならないでしょう。

 

また、会社が調査した結果、仮に何らかのハラスメントの事実が確認できた場合でも、労働者がプライベートで悩みを抱えているような場合は、労働者の精神障害発症の原因として、会社の業務と労働者のプライベートでの出来事のどちらがより影響しているのかという点が問題になることもあります。例えば、労働者が多額の借金を抱えて金融機関から厳しく返済を迫られていたとか、配偶者と離婚した、親族が他界した、恋人と別れた、就業時間外に重大な事件・事故に巻き込まれた、といったような事情がある場合には、こういったプライベートでの出来事がその労働者の精神障害発症に強く影響していることも考えられます。

 

会社内で、労働者の精神障害発症の原因について判断が難しいときは、弁護士や社労士、産業医や精神科医などの専門家に相談しながら慎重に検討すべきです。

 

以上のような検討を行った結果、やはり労働者の精神障害発症の原因は会社内のハラスメントにあったというときは、妥当な慰謝料等損害賠償額の計算を行います。
もっとも、慰謝料や逸失賃金の計算は、非常に難しい側面があります。

 

そもそも、ハラスメントを原因とする損害賠償請求を訴訟により行う場合は、労働者が、不法行為が成立する要件に該当する事実につき主張立証する義務を負うところ、通常は労働者に十分な証拠がないことが多く立証が難しいという問題があります。また、ある程度労働者側で立証できたとしても、裁判所が認める慰謝料や逸失賃金の額は思いのほか少ないということもままあります。
では、会社として労働者が訴訟等法的手続きに訴えるまで待つのが得策かというと、必ずしもそうとは言い切れません。まず訴訟に至った場合は、会社は弁護士を雇うことになるでしょうが、そのときの弁護士費用についてはある程度の額を覚悟しなければなりません。またハラスメント、特にセクハラなどの事実が社外に広まると、会社の信用失墜につながることもあります。

 

以上のようなことを総合的に考慮すると、労働者の慰謝料等損害賠償の請求に対しては、会社としては「解決金」という名目で事件の内容に応じて、賃金の1ヶ月分から数ヶ月分、または一定額を支払うことを労働者に提案してみて、当事者間で和解により解決を図ることを模索してもよいのではないでしょうか。

労働者が精神障害を発症したことを理由に労災請求したいと言ってきたら

労災とは労働者が業務上又は業務に起因して怪我を負ったり病気を発症するなどした場合のことを言います。

 

労働者の労災により発生した治療費や、治療のために休業を余儀なくされた場合の休業期間中の逸失賃金、治癒後に残存する後遺障害により生じる労働能力喪失分を補てんする補償(年金)等は、労働者災害補償保険法に基づき、労働者が国に対して保険給付を請求し、国が労働者の請求を受けて事案を調査し労災認定したときに保険給付を行うことによって、大部分が補償されます。

 

労災保険の保険料は全額事業主負担となっています。ただし、実際に労災保険法が対象とする保険事故が発生した場合の、保険給付に係る権利義務関係は、労働者が保険給付を請求できる権利者であり、国が保険給付する義務を負うことになります。通常労災が発生したときは、会社が労災請求に係る書類等を作成し、管轄の労働基準監督署や労災指定病院などに提出していますから、第一義的には事業主が労災か否かを判断して手続きを行う権利者のような誤った認識を持っていることもありますが、これは誤りです。
会社は業務上又は業務に起因して労働者に事故が発生したときに、労災保険請求に係る書類の事業主が証明すべき事項を記載する義務を負うものであり、保険給付を行うか否かの判断は、保険者たる国が行います。

 

なお、労災事故を理由とする国の保険給付は、治療に要する費用に関しては全額支給されますが、休業補償については賃金の8割までしか補償されません。また労災により生じた精神的苦痛に対する慰謝料は保険給付の対象ではありません。したがって、労災保険によって補償されない部分については、会社が安全配慮義務違反等の債務不履行を理由として労働者に賠償しなければなりません。

 

ところで、労働者が上司等からパワハラやセクハラなどを受けたことにより、うつ病などの精神障害を発症した場合、そこに業務起因性が認められると、労災保険給付の対象となります。パワハラやセクハラを原因とする労災の認定基準は厚生労働省により示されています(詳細はこちらをクリックしてください。)。

 

労働者の精神障害発症を事由とする労災請求でしばしば会社として対応に苦慮することは、会社としては、労働者の精神障害発症の原因は業務に起因するものではないという認識にあるにも拘らず、労災請求に係る書類で事業主が証明しなければならない事項については証明を拒否することができないということです。なぜならば、労働者の求めに応じて事業主が証明すべき事項を安易に証明すると、会社が、労働者に生じた精神障害の業務起因性を認めたことになり、労働者が会社に対して損害賠償請求を行ってきたときに、反論できなくなるからです。

 

では、労働者が会社に対して精神障害を発症したことを理由に労災請求したいと言ってきたときに、会社としその労働者の精神障害発症に業務起因性がないという認識のとき、会社としてどのような対応をすべきでしょうか。
通常労災事故が発生したとき、労災請求に係る労働基準監督署等に対する手続はほとんど会社が労働者に代わって行っているはずです。しかし、本来労災請求に係る手続は、保険給付に係る権利義務関係に着目すると、労働者が行うべきものです。それを通常会社が代行しているに過ぎません。
そこで、会社として意に反する労災請求を労働者が求めているときは、会社が証明(記載)すべき事項のみを記載し、事故発生時の状況等については労働者本人に記載してもらうようにします。また労働基準監督署への書類の提出等も労働者本人に行ってもらうようにします。その上で、会社としてはその労働者の精神障害発症を労災とは認識していない理由を詳述した「理由書」を作成し、労働基準監督署へ提出します。このようにして、会社として法律上課せられている義務を果たしつつ、労働者の精神障害発症については会社に責任がないという考えであることを、念の為に表明しておくことで、後から労働者が会社に対して損害賠償請求してきたときに、一応反論できる余地を残しておくことができます。

パワハラ・セクハラ・マタハラに係る参考となる裁判例

参考判例をいくつか挙げておきます。参考にしてください。

 

パワハラ

1 東京セクハラ(T菓子店)事件 東京高裁平成20年9月20日判決
  <事件の概要>
本件は、高校を卒業して平成17年4月1日から、3年契約、1年ごとの更新という条件で契約社員としてY社(被告、被控訴人)が経営する菓子店B店(本件店舗)に勤務していたX(原告、控訴人)が、同店舗の店長A(昭和49年生まれでXより12歳年上)からセクハラ、暴言・暴行(店長Aの発言内容として「頭おかしいんじゃない」「遊びすぎじゃないの」「エイズ検査を受けた方がいい」等)を受けたとしてY社に対して損害賠償を求めたケースである。本件店舗は、E線F駅併設の1階建てショッピングセンターB内にあり、洋菓子売場と洋菓子製造工房が設定されていた。洋菓子売場に常駐して勤務していたのは、店長A(平成17年5月16日から本件店舗の店長に異動)と契約社員X、パート従業員のGとHの4名であり、平成18年1月からはXの紹介によりXの友人Iがアルバイトとして勤務するようになった。他方、本件店舗の洋菓子製造工房には、2、3名のケーキ職人が常駐し、販売業務から独立してYから別途指揮監督を受けていた。
 <1審判決>
Xの請求棄却
<2審判決>
Xの請求容認
慰謝料50万円・逸失利益99万5000円・弁護士費用20万円
 第1審は、店長のAが、「頭おかしいんじゃない」「遊びすぎじゃないの」等の発言をXに対して仕事上の注意、叱責をしていたが、これは、XがAの指示に従わなかったときの叱責、遊びすぎると仕事に差し支える、あるいは店舗で無駄話をしないようにとの注意、指導であって、その言葉自体は必ずしも適切のものとはいい難い部分があるものの、直ちにXに対して損害賠償義務を発生させるものではないとし、また、AがXの面前でエイズ検査を受けた方がいい旨の発言をしたことがあったが、職場における雑談の域を出ないものでXに対する違法な言動であるとはいえないとし、さらに、Xに「秋葉原で働いた方がいい」と言ったというのも職場における雑談・軽口の域を出ないものでXに対する違法な言動であるとは認め難いとして、部下の育成、指導の効果の観点からみて個別的には必ずしも適切かつ的確なものであったとはいえない部分があることは認めながらも、結論としては結局、「職場において許容される限度を越えた違法な言動であったと認めるには足りない」としてXの請求をすべて棄却していた。
 これに対して第2審は、Xの控訴を認容して次のように判示している。AがXに対して「頭おかしいんじゃない」「エイズ検査を受けた方がいい」等の発言をしたことは、XにおいてAの発言を強圧的なものとして受けとめ、またはXの性的な行動をやゆし、非難するものというべきであり、男性から女性に対するものとしても、上司から部下に対するものとしても、許容される限度を超えた違法な発言であった。また、Aは、業務を終えて更衣室に向かう途中でXに対して「処女にみえるけれど処女じゃないでしょう」と発言し、またGやHも同席するC屋でクリスマスの慰労会が行われた際に、Xに対して「Bにいる男の人と何人やったんだ」「何かあったんじゃない?キスされたでしょ?」などの発言をしているが、これらの発言は必要性が全く認められない、ただXの人格をおとしめ、性的にはずかしめるだけの言動であり、他の従業員も同席する場において発言されたものについては、Xの名誉を公然と害する行為であり、明らかに違法である。

2 事件名不詳 東京地裁平成26年11月4日判決
  <事件の概要>
 ・被告会社は首都圏を中心にステーキ店等を展開する株式会社。
 ・原告は、被害者の両親。被害者は広告卒業後他の会社を経て2007年7月に被告会社に就職
 ・2009年7月に渋谷区のステーキ店の店長に就任する前後から一日12時間半程度の恒常的な長時間労働と上司による暴行・暴言を受けていた労働者が2010年11月に店舗近くで首つり自殺をした。
 ・認定された事実等。上司(エリアマネージャー)による頭を殴られるといった暴行。「業務への取り組み方が悪い。それはあなたの人格が悪いからだ」といった暴言。たまの休日にも上司から「ソース買って来い」と呼び出される。仕事終了後にカラオケや釣りに付き合わされる。恒常的な長時間労働(1日12時間半程度の労働。特に自殺前7ヶ月間の1月当たり平均時間外労働時間は190時間超。1月当たりの平均総労働時間は560時間。)精神障害を発症し自殺した。
 ・渋谷労働基準監督署は2012年に労災認定。
  <判決>
 原告の請求容認。パワハラや長時間労働と精神障害を発症し自殺に至った因果関係を認め、会社に対し5700万円の損害賠償を命じた。

 

セクハラ

1 福岡キュー企画事件(福岡セクハラ事件) 福岡地裁平成4年4月16日判決
  <事件の概要>
 雑誌社(Y2)の編集長(Y1)が、パートとして入社し、その後能力・経験を買われ正社員になったXに対し、(]の能力に対する)嫉妬等の感情から社内の関係者にXの私生活、ことに異性関係が乱脈であるかのようにその性向を非難する発言をした。
また、Xの異性関係の個人名を具体的に挙げて(それらすべて会社関係者)会社内外の関係者に噂を流布した。
 上司であるB専務に報告し、Xを退職に追い込んだ。
  <判決>
・慰謝料150万円。弁護士費用15万円。(Y1とY2が連帯して)
・Y1の不法行為責任とY2の使用者責任(民法715条)を認めた。
・本件は、福岡高裁で実質的に原告勝訴の和解が成立。

2 岡山セクハラ事件 岡山地裁平成14年5月15日判決
<事案の概要>
 Y1(Y3社の専務取締役営業部長)は]1に対し、上司としての立場を利用して異性関係を問いただしたり、電話をする等の行為をし、さらには後継者の地位を利用して肉体関係を持つように求めた。
 また、]1と親しくし、Y1の行為に関する相談を受けていた]2に対して、Y1は]1と肉体関係を持てるよう協力することを要請した。
 ]1、]2とも拒否。そして]1、]2らの数名の従業員でY2(Y3会社の代表取締役)にY1の行為を訴えた。
 Y2は役員会議を開き、]1らから事情を聴取したもののセクハラの事実を否定。その後Y1は自らのセクハラを否定しつつ]1は淫乱である等と繰り返し述べ、]1と他の社員との関係を壊し、]1の職場復帰を不可能にした。また、]2についても同様に淫乱である等の風説を流布した。
 上記役員会議後、]1、]2ともに支店長職を解任され一般社員に降格され、月額給与も段階的にとはいえ]1は70万円から30万円に、]2も80万円から32万円に引き下げられ、最終的には仕事も取り上げられた挙句、給与の入金もなくなっていた。(改善の見通しが立たないと判断し、]1・]2とも退職を余儀なくされた)
 ]1らは、Y1のセクハラ行為、Y2の性的嫌がらせないし男女差別発言が不法行為等に当たるとし、民法709条に基づき、Y1らに対し損害賠償請求訴訟を提起した。
・Y1らはセクハラ行為を否認した。
<判決>
]1:Y1のセクハラに対する慰謝料200万円、Y3固有の不法行為による慰謝料50万円、未払い賃金相当損害金339万円、逸失利益799万円(中間利息控除後の1年分給与)、弁護士費用(Y1につき20万円、Y3につき140万円)。
]2:Y1のセクハラに対する慰謝料30万円、Y3固有の不法行為による慰謝料50万円、未払い賃金相当損害金356万円(中間利息控除後の1年分給与)、逸失利益914万円、弁護士費用(Y1につき3万円、Y3につき130万円)。
 なお、Y1についてはY1とY3の連帯責任とし、Y2の不法行為責任については認めなかった。

3 横浜セクハラ事件 東京高裁11月20日判決
  <事件の概要>
 被告Y2会社に勤務する原告女性従業員Xは、被告男性上司Y1(部長兼営業所長)が、
1)Xの席の近くを通る時にXの肩をたたいたり頭髪をなでるようになったこと。
2)Xが腰を痛めた時「良くなってきた」といって腰を触ったこと。
3)事務所で2人になったとき肩を揉んだり頭髪を弄んだりしたこと。
4)2人で外出した時に「今日はありがとうね」と言いながら肩を抱き寄せたこと。
5)事務所で2人になった時、Xの後方から抱きつき、服の下に手を入れて腰や胸を触り、口を開けて舌を入れようとしたり、腰を密着させて]のズボンの上から指で下腹部を触ったりしたうえ、その行為から逃れようとした]に20分もの間、執拗にこのような行為を継続したこと。
6)3日後にDの行為を認めて謝罪したものの、それを後に否定し、その事実をXから告げられたY2社代表取締役から叱責されたのちは、]に仕事をさせないようになり、]を退職に追い込んだこと。
から、Y1に対し、不法行為を理由とする損害賠償請求訴訟を提起。
同時に、Y2並びにY1をY2に出向させているY3会社に対して、使用者責任に基づく損害賠償の支払いと、新聞紙上に謝罪広告を掲載することを求めた。
 <1審判決>
 ]の請求棄却
 <2審判決>
・原審取り消し。
・Y1、Y2に対し、連帯して慰謝料250万円、弁護士費用25万円の請求を認容。

・Y3については、実質的な指揮監督関係がないとして使用者責任及び不法行為責任を認めなかった。
・謝罪広告についても認めなかった。

4 独立行政法人L事件 東京高裁平成18年3月20日判決
  <事件の概要>
独立行政法人Aに勤務するXが、異動先として希望していた部署の管理職Yから数年間にわたりセクシュアルハラスメント行為を受け、多大な精神的苦痛を受けた結果退職に追い込まれたとして、Yに対し不法行為による損害賠償の支払いを求めた事案。
<1審判決>
Xの請求容認
<2審判決>
Xの請求棄却
<上告審>
二審の判決支持・上告棄却
第一審川崎簡裁は、セクハラ行為(上司の発言として「あのころは忙しさのピークで。家に帰ってもチンポが立たなくなってな。」)を認定するとともに、セクハラ行為が継続しているとして消滅時効の完成も否定した。これに対して、Yの控訴を受けた第二審横浜地裁は、Yの下ネタ話は女性に対する配慮を欠くものではあるが以前の多忙な生活状況を示す一つのエピソードであり、同様の発言が繰り返されたとは認められないとして、違法性及び損害の点において典型的なセクハラとは言えないとした。また「不倫しよう」発言についても、その誘いを断ったため異動希望が叶わなかったとのXの主張は合理性を欠き、その後もYと食事をしたり、自からYに声をかけたりするXの行動はセクハラ被害者のものとは言えないこと等から、セクハラ行為があったとは認められないとして、一審判決を取り消しXの請求を棄却した。
Xの上告を受けた東京高裁は、二審の判断を正当として上告を棄却した。

 

マタハラ

事件名不詳(マタハラ事件) 広島高裁平成27年11月17日判決
<事件の概要>
広島市の病院に理学療法士として勤務していた女性Xが、労働基準法65条3項に基づく妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任を免ぜられ、育児休業の終了後も副主任に任ぜられなかったことから、勤務先の病院に対し、副主任を免じた措置は雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「均等法」という。)9条3項に違反する無効なものであるなどと主張して、管理職(副主任)手当の支払及び債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求めた事案。
<1審判決>
Xの請求棄却
<2審判決>
Xの請求棄却
<上告審>
原判決破棄、高裁に差戻し
<差し戻し控訴審>
最高裁が違法と初判断した訴訟の差し戻し控訴審判決。広島高裁(野々上友之裁判長)は十七日、降格を適法とした一審広島地裁判決を変更し、精神的苦痛による慰謝料も含めほぼ請求通り約百七十五万円の賠償を病院側に命じた。女性が逆転勝訴した。
差し戻し控訴審で病院側は、特殊事情として、女性に協調性がないなどと適格性を問題視したが、野々上裁判長はいずれの主張も退け「女性労働者の母性を尊重し、職業生活の充実の確保を果たすべき義務に違反した過失がある」と病院側の対応を厳しく批判した。
復帰後の地位の説明がなかった点などを挙げ、降格を女性が承諾したことについて「自由意思に基づいていたとの客観的な理由があったとは言えない」と述べた。

 


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