労使トラブルをより早くより安く解決を図るなら

できる社長は労使トラブルの解決を長引かせない

労使トラブルの早期解決法は、裁判前に「和解」

「裁判で争っても得することは何もない。儲かるのは弁護士だけで、会社は金が出ていくばかりだし、労働者も結果的にお金は大して残らない。」

 

社長さん、労使トラブルは、迅速に解決を図るべきです。なぜでしょうか。

 

私はこれまで10年以上にわたり、専ら労使トラブルに巻き込まれた労働者をサポートする形で、労使トラブルの解決を手伝ってきました。会社からの依頼も受けていましたが、割合的には9対1くらいで労働者からの依頼を受けていました。
私がこれまでに受けた労使トラブルに係る相談件数は4000件を超え、実際に百数十件の労使トラブル解決に携わってきました。労使間の当事者同士での話し合いの場に同席したり、裁判外の労使トラブル解決制度である労働局や社労士会のあっせんで当事者を代理したり、裁判所の労働審判手続で労働者の本人申立てをサポートする形(社会保険労務士は裁判所での代理権はありませんので、代理行為は行っていません)で、関わってきました。あっせん不調の後の労働審判手続きの本人申立て支援件数は平成27年末までで32件に上ります。

 

最初にあげた言葉は、私がサポートした労働者の残業代請求の案件で、相手方である会社の社長さんが発したものです。

 

この社長さんの言葉こそ、会社として労使トラブルを早期に解決させるべき理由があります。

 

労使トラブルの解決を遅らせると、それだけ余計な費用がかかってしまうのです。

 

例を挙げましょう。

 

私が数年前に経験した労働者からの相談を受けた懲戒解雇の案件。
私は労働者の相談内容から、明らかにその労働者の受けた懲戒解雇は違法無効と考えましたので、その相談者に、会社に懲戒解雇無効を主張し同時に話し合いを希望する旨の文書を送付するようにアドバイスしました。そうしたところ、私の同席の下その労働者と会社との間で話し合いを行うことになりました。
しかし、会社との話合いでは解決に至りませんでした。労働者は、私が紹介した弁護士を代理人に立てて、賃金仮払い仮処分申請と同時に地位確認(解雇無効)の訴訟を起こしました。
訴訟は1年近くかかり、結局、会社が労働者に解決金として300万円を支払うことで和解となりました。労働者からすると勝訴的和解、逆に会社からすると敗訴的和解です。
実は訴訟に至る前会社との話し合いで、労働者は賃金の6ヶ月分相当を解決金名目の和解金を支払ってもらえたら、和解してもいいということを会社に伝えていました。
しかし会社は労働者のこの提案を拒否した結果、訴訟に至り、結果的に当初労働者が提案していた解決金のおよそ倍の額の解決金を支払う羽目になりました。しかもここで重要なのは、労働者に支払った解決金が当初の労働者の提案を拒否した結果倍額になってしまったということではありません。
重要なことは、会社が訴訟のために弁護士にサポートを依頼したその弁護士費用が余計にかかってしまったということです。おそらく、1年近くかかった訴訟ですので、会社は弁護士費用や裁判費用等もろもろを含めれば150万円から200万円近くはかかってしまったのではないでしょうか。

 

また、ある残業代請求の案件。
会社への請求金額は約60万円でした。
労働者が会社に送った「請求書」に対して、会社は弁護士を代理人に立て、弁護士を通じて支払いに応じない内容の回答書を労働者に送ってきました。
そこで、労働者は裁判所に残業代の支払いを求める労働審判手続きを申立てました。
労働審判手続では、労働審判官(裁判官)を中心とする労働審判委員会が、会社に対して約30万円を解決金として支払う内容で労働審判しました。
しかし、これに会社は即異議を申し立て、この残業代請求の事件は訴訟に移行。
訴訟で1年近くの審理を経て、裁判所は会社に、残業代に付加金を合わせて結局約50万円の支払いを命じる判決をしました。
もっとも50万円という金額は会社にとっては大したことはないかもしれません。
しかし、ここでも問題なのは、労働審判と裁判に要した費用、特に弁護士費用です。
おそらく、どんなに少なく見積もってもすべてを含めて会社が負担した弁護士費用等は200万円程度はかかっているでしょう。

 

結果的にということでしかありませんが、これは利益を上げることが命題の会社として適切な行動だったといえるでしょうか。

 

私は、これまで専ら、労働者からの依頼を受ける形で労使トラブルの解決に関わってきました。おかげで、会社から見るその逆の労働者側からの視線で労使トラブルに関して、会社の弱点や、就業規則上の不備が私を引き寄せてくれます。

 

事実は重箱の隅を突くときに浮き彫りになります。

 

労働事件は、特に戦後、数多くの裁判例が蓄積され、労働契約の変更や終了等(解雇や雇い止め等)に関する最高裁判例については今日、労働契約法という法律に結実しています。労使トラブルは、ことに特殊な内容ではない限り、ほとんどの事件で類似する例が裁判所で判断されており、その裁判例を見れは、裁判所がどういう判断をするか、おおよその予測がつきます。
過去の裁判例を紐解けば、裁判所は一貫して、労働者は弱者だ、という観点から労働事件を判断していることがわかります。特に解雇事件などはこれが顕著です

 

実際私の経験からも、労働審判手続などで弁護士などと労働者をサポートする中で、多くの、会社側の代理人として弁護士が作成した答弁書を見てきましたが、いかに弁護士が充実した答弁書等準備書面を裁判所に提出しても、労働者側が端的に法的要件事実を指摘した申立書を提出していれば、労働者が有利な内容での和解になる事例がほとんどでした。
逆に会社側で、弁護士の下であるいは直接会社をサポートする形で答弁書等準備書面作成を手伝ったこともありますが、いかに書面にて主張をしても、立証が足りないことが多く、また、主張自体も裁判所は「そうはいっても…」と否定的に取られることが多く、結局会社がある程度の解決金を負担する形での和解で終わる例がほとんどでした。

 

もっとも、労働者の中には無理な請求を会社に行ってくることがあります。

 

特に今日、労働者から会社に対する、パワハラやセクハラといったハラスメントに係る慰謝料等損害賠償請求が増加しています。ハラスメントに関しては、ハイパーセンシティブ・ビクティムの問題があります。つまり、過敏に反応する労働者のことです。ちょっとしたことでもすぐに、パワハラだ、あるいはセクハラだ、と騒ぐ労働者がいることも事実です。

 

また、会社が法的にしっかりと対処していたにも拘らず、後になって会社に損害賠償を請求してくる労働者もいます。
労働者の会社に対する法的に無理な主張内容での損害賠償請求は、裁判所は厳格に判断しています。
私が労働者をサポートした例でも、労働契約の終了について、労使双方でしっかり合意書を取り交わしていたにも拘らず、後から会社に損害賠償請求した例では、裁判所は労働者の請求を退けました。

 

労働者の会社に対する請求について、どういった権利がどの程度認められるのか、あるいは認められないのか、については単に労働法のどの条文に該当するかとか民法のどの条文に該当するか、といったことだけを知っていても不十分です。
権利を主張するには、どの法律のどの条文があるか、その法律に該当する事実をどういった証拠に基づいて主張するのか、主張立証責任は労使のいずれが負うのか、請求の理由に対して、事実を否認するのかあるいは抗弁するのか、こういったすべてを含めて、検討を加えなければなりません。

 

労働者の理不尽な請求には毅然とした態度をとることが重要です。

 

しかし、労働者の請求を客観的に検討して、そのうえで認められる労働者の権利については、会社として和解という方法で、早期に大事に至る前に、解決を図ることが、経営上大切だと私は考えています。

 

私たちは法治国家日本で活動している以上、労働者の主張する権利の有無は一義に法に照らし判断すべきものであり、労使トラブルで労働者の主張する事実を法に当てはめた結果、そこに明らかな権利が発生しているのであれば、それを妨げることは許されません。

 

もっとも、だから、会社は社会的責任を負っているから、労使トラブルは早期に解決を図るべきと、私は言っているわけではありません。

 

古代、お釈迦様はこう言いました。
「もろもろの怨みは怨み返すことによっては、決して鎮まらない。もろもろの怨みは怨み返さないことによって鎮まる。これは永遠の真理である。」
また、聖徳太子は17条憲法の第1条をこう定めています。
「以和為貴。無忤為宗。」(=和をなによりも大切なものとし、いさかいをおこさぬことを根本としなさい。)
人間は昔から、和をもって事に処することを善しとしていましたから、労使トラブルも賢者の教え、人倫に従って、和をもって早期に解決を図るべしなどということではありません。

 

労働者は日々の生活がかかっているから、情において労使トラブルの早期解決を図るべき、とも私は言っていないのです。

 

労使トラブルを早期に解決を図るべき理由。
それは、一義に会社の経営を考えればということなのです。

 

労使トラブルは、早期に解決を図ればそれだけ、無駄な、費用を抑えることができます。

 

労働者と労使トラブルになってしまった会社の社長さんの中には、その労働者に対して怒りの感情に支配されて、建設的な解決を遠ざけているように思うことが私はしばしばあります。
確かに、労働者が通常の勤務時間にダラダラ仕事をして、社長さんが特に命じてもいないのに残業を行い、その挙句、その労働者が退職した後に、会社に対して残業代の支払いを請求してくることなどに直面すると、日々数字とにらめっこしている社長さんからすると、込み上げてくるのは怒りの感情しかないでしょう。

 

しかし、労働者が残業代を会社に請求したとき、労働者の請求が正当なものかどうかの規範となるものは社長さんの胸の内にあるのではなく、唯一、それは法でしかありません。法に照らし法が要件とする事実があるか否かによって、権利が発生するかどうかを判断するのです。

 

労働者から何らかの請求を会社が受けたとき、その労働者の請求内容を法に照らし、労働者の請求が認められるのかどうか、認められるとするとその程度はどの程度なのか、これらのことを客観的に検討し、訴訟になった場合に予想される判決を考慮して、そこから逆算して、今どういった行動をとることが経済的に合理的なのか、考えるべきです。

 

以上を総合的に考慮すると、労使トラブルの最も合理的な解決法は裁判に至る前に労働者との間で和解することで解決を図ることだと言えます。

 

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